日本が誇る芸術家”久保田一竹”が生涯をかけた一竹辻が花。その芸術性は感動という言葉だけでは足りない
久保田一竹さんをご存知でしょうか。
江戸時代に失われた着物の染色・装飾の技法「辻が花」を現代に復活させることに生涯をかけ、「一竹辻が花」という縫締絞(ぬいしめしぼり)を手法とした技法を発展させた人物です。
今回、「一竹辻が花」の実物を見に、久保田一竹美術館を訪れてきましたので紹介します。
久保田一竹と辻が花
辻が花
辻が花は室町時代に栄えた縫締絞を手法とした技法の文様染めです。
しかし、辻が花はその作成に多大な時間と技術を有するとともに、江戸時代に「友禅染」が登場したことによって、その技術は失われていきました。
久保田一竹
14歳の時に一竹は友禅師の小林清の弟子となる。一竹は20歳の時、東京国立博物館にて辻が花の織物の一片を見たことをきっかけに、一生を辻が花の復刻に捧げることを決める。しかし、辻が花の生地に見られる複雑な装飾技法を説明する情報が何も残っていなかったこと、辻が花に必要な練貫の絹の生地が既に生産されなくなってしまったこと、この2点のために、一竹は何十年も研究に費やすこととなった。
1962年一竹は、伝統的な辻が花を完璧に復刻するのは技術的に不可能であると判断し、代わりに“一竹辻が花”として自己流の辻が花を発展させることにしました。
ja.wikipedia.org
久保田一竹氏は太平洋戦争に応召され、戦後3年間に渡ってシベリアで31歳まで抑留生活を送っていました。
本人の言葉では「シベリアは生きるにはとても厳しく、その生活の中で見た夕日の美しさに感銘し、辻が花の復活させたいと願った」と言われていました。
ただでさえ生き抜くことが厳しかったシベリア抑留を乗り越え、生涯をかけ完成させた「一竹辻が花」を一目見たいと思う事2年、ようやく久保田一竹美術館を訪れることができました。
久保田一竹美術館に行ってきた
さあ、いよいよ久保田一竹美術館です。
入口から驚かされる仕掛けが
日本のデザインとは違う、どこか自然と一体となったアジアの遺跡を思わせるような門をくぐって中に入っていきます。
その先に待っていたのは豊かな自然を思わせる庭園
日本庭園と言うと手入れされた美しさがありますが、この美術館には豊かな自然が表現されていました。
見上げると”もみじ”が多く植わっていましたので、秋には庭園全体が赤く染まることを想像すると、とても美しいことでしょう。
白い外壁と緑に覆われたエントランス
美しい新緑を抜けていくとそこに待っているのは、白い外壁と緑に覆われたエントランス。
ジブリの世界を思わせるような、そんな雰囲気です。
日本庭園とヨーロッパを思わせるようなデザインは、感動というよりも何か胸に迫るものが感じられます。
この先に何が待っているのかドキドキさせられるような、そんな空気をもっていました。
基本的に室内の撮影はNGでしたので、外の写真しかありません。涙
いよいよ一竹辻が花の世界
エントランスの建物を抜けていくとそこには木造の建物が見えてきます。
そしてここからが「一竹辻が花」の世界が待っています。
と入る前に、ふと脇に視線を逸らすと
なんと建物の構造を支える柱が、岩と大きな丸太のハイブリットになっているではないですか。
丸太と岩(コンクリートかな?)の接合部はその表面に合わせて加工がされています。
石垣の上に建物を建てる日本建築の技術「光付け」を思わせる作りです。
光付け
光付けは岩のデコボコした表面に合わせて丸太を加工するため、高い技術と労力が必要となります。
そしてこの建物も美しい新緑に包まれていました。
感動という言葉では足りない一竹辻が花
さあ今度こそ「一竹辻が花」!
ですがやっぱり、ここも撮影NG。
実際にはこんな雰囲気です。
建物は樹齢千年を超えるヒバの柱を16本をつかった角錐のような形をしています。
とても天井が高く、屋根のところどころに空いた窓から差し込む自然光がまたいい雰囲気をだしています。
一竹辻が花は、一着では絵画のような繊細で美しい着物ですが、並べると連作としての美しさも現れてきます。
また、複数種類の縫絞染によって現れる立体感が見る距離、角度によって作品の芸術性をさらに高めています。
一つの作品に1年を要すという着物の手作業で染められた生地の繊細さは、是非、現物を見てください。
見学だけもできる茶房「一竹庵」
辻が花の展示場の奥にカフェが併設されています。
この室内の雰囲気も素敵ですが、カフェから見える庭園がまた安らぎをもたらしてくれます。
カフェから見える池には、珍しい黄金ヤマメがいるそうです。見学だけもできますので、是非立ち寄ってみてください。
未完の大作「光響」ができるまで
久保田一竹さんの作品で未完の連作があります。
そのなも「光響」(こうぎょう)
最終的には全80連作となり、四季・海・宇宙を表現しようとした作品は、まだ半分ほどしか完成していないようです。
久保田一竹さんは2003年に逝去され、「光響」はその下絵までが描かれているそうで、
今は久保田一竹さんの遺志継ぐお弟子さんたちが、残りの作品を手掛けています。
一年に一作できることを考えると、私が生きているうちに完成された「光響」見ることができるでしょうか。
ミシュラン観光ガイド3つ星の美術館
2009年に久保田一竹美術館はミシュラン観光ガイドで3つ星を獲得しています。
世界的にも評価されているんですね。
実はこの美術館の設計は久保田一竹さん本人だそうです。
これも驚き。
美術館の周囲には庭園を楽しむ散歩道があります。一竹辻が花だけでなく、その豊かな自然と、独特な世界観を持った建築を楽しんでみてください。
そこにある全てが芸術品です。
一人の人が一生をかけた「一竹辻が花」。着物も芸術もあまり興味のない人にも、一度見ていただきたい、素晴らしい美術館でした。
是非一度訪れてみてください。
久保田一竹美術館の詳細
住所:山梨県南都留郡富士河口湖町河口2255
電話:0555-76-8811
開館時間:12月~3月 10:00~16:30
4月~11月 9:30~17:30
入館料:大人1300円、大学・高校生900円、中学・小学生400円
アクセス:河口湖駅よりタクシーで約10分、または周遊レトロバスにて約25分(久保田一竹美術館前降車)
公式HP:久保田一竹美術館 ITCHIKU KUBOTA ART MUSEUM
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